降り出した雨は止みそうにない。
どうにも耳が痛くて、そのドアを開けた。
taste of LOVE
屋敷程ではないが、それなりに重厚な観音開き。
踏み入れた床も厚い絨毯が敷かれている。
この国でも屈指のスイート、中々悪くない。
備品もまぁまぁ。
自分に宛がわれた部屋と比べれば流石にグレードは高い。
と言っても、自分は3番目。
寝室のドアを無造作に開いた。
瞬間、鼻先を掠めたアルコールの香り。
正面の窓には幾つもの水滴が張り付いていて、
その前には、下品なネオンに照らされた部屋主の横顔。
まるで、
「…何の、用だ」
漸く届いたのは、嫌に掠れた声。
分厚い憂鬱を纏った室内は、辛気臭くて笑う気にもなれない。
「べっつにー?」
不似合いな声音で言うが、咎める様子もない。
それどころか、視線すらよこさない。
出て行けとも言わない。
代わりに零れたのは、酒臭い溜息。
手にしたグラスの中には、自分には馴染みのない色をしていた。
だが。
テーブルの上の酒瓶には見覚えがあった。
無様。
「…ボス」
近づくことも拒まれない。
窓の向こうを、雨の向こうを見つめてる真紅。
今更何を探してるって言うんだ。
「それ、美味しい?」
オレ知ってるよ、ソレが何だか。
「…味、するんだろ?アイツの」
「…」
お気に入りなんだって、自慢してやがったんだ。
王子はそんな安っぽい味は口に合わないって言ったら、
ボスと同じ事言いやがる、なんて笑った。
一緒に晩酌なんてしない癖に。
なんでボスがお前の好きな酒の味なんて知ってんだって話。
「ねぇ、」
松葉杖を脇において、脚の間に跪く。
それでも、その視線を得る事さえ叶わない。
苛立ちは一層深まって、嗜虐心が疼いた。
「分けてよ、少し…さぁ」
顔を近づけて、触れる程の距離で、
「アイツの、味」
「…」
拒まない、情けない唇。
アンタが蒔いた種の癖に。
また、置いて行かれた。
8年という歳月に。
そしてこれからの日々も。
誇りだとか誓いだとか、むず痒い台詞を吐いて。
アイツはまた嘘をついた。
置き去りにされた彼は、こんなにも脆弱で無力で無様だ。
お前は欺瞞で水に沈んで、良かっただろう?
伸ばした指を、唇を、舌を、吐息を享受した後で。
身代わりでさえ欲したと言う事実に彼は愕然とするだろう。
知れば彼は、殴るだろうか。
でもそれさえもアイツの影を追わずには居られない筈だ。
ハリウッド級の愛情に足元を掬われて、
独り墜ちて行く彼の悲痛な断末魔を夢想する。
ざまぁみろ。
オレは今、それが楽しみで仕方がない。
「…ぁ」
絡まった舌からは、アイツの味がした。
fin.
水に沈んで=見ずに済んで。
25時の憂鬱のインスパイアーなのにタイトルがラルクって…(笑。
超ドSのベル。
どっちかって言うと多分、ベルザンだコレ←ぶはー!
2007/06/06